大人の図鑑カフェ

fumikura梅酒の唎酒と由来

fumikura梅酒の唎酒と由来

そろそろ時期を過ぎそうですが、梅酒を漬ける季節です。

fumikuraでは梅酒を自家漬けしています。
その種類はレギュラー12種類+期間限定が幾つか。
種酒はシングルモルトウヰスキー、バーボン、ホワイトラム、ブランデー、ジン、泡盛、テキーラ、ウォッカ、焼酎など様々で、基本的には三年以上熟成させてからご提供しておりますので、バックヤードには齢を重ねる熟成梅酒がズラリと並んでいます。

様々な酒蔵さんや酒造メーカーさんからお取り寄せされている梅酒BARさんも増えて参りましたが、一本気に様々な種酒で自家漬けしているお店さんは、なかなか見当たらないような気がします。三種類の梅酒をブレンダーグラスで唎き分ける「飲み比べセット」など、図鑑を片手にゆっくりと味わう大人時間はいかがでしょう?種酒によって『こんなに違うのか!』という新たな梅酒体験が出来ると思います。

レギュラー梅酒の種類と解説は、過去記事自家製梅酒の種類と由来】(←飛べます)に譲りますが、今回はfumikuraのバリエーション豊かな梅酒が生まれた背景について、書いてみたいと思います。

時は2011年に遡ります。まだ、フランチャイズの弁当店を営んでいた頃です。
東日本大震災の起こった年ですが、3.11.直前の正月に、父が過労で倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。
十年一日のような生活の中で、確実に家族の体も心も蝕まれていく、、、
年末に一年を振り返っても、何の想い出も無い年月だけが虚しく過ぎていく。
“僕たち家族は、一体なんのためにボロボロになっているんだろう”
でも、その生活を止める勇気はありませんでした。

『そうだ、梅酒を漬けよう。』
唐突にそう思った時には、もう既にウヰスキー白州10年を何本も抱えて、青梅を洗っていました。たぶんもう、心のどこか壊れていたのだと思います。

_梅酒は、流れゆく年月を裏切らない_
蒸発するように過ぎてゆく日常を越えた先に、確実にその年の記録が残る。そういった “後ろ向きなのか前向きなのか良くわからない感情” の成果物が梅酒でした。それから、気が触れるような高価なお酒で毎年梅酒を漬けるのが習慣になりました。 熟成が進むにつれて色も変わってアルコールの角が丸くなり、高い度数種酒でも3年~5年で美味しく飲めるようになることを知ったのはそれ相応の年月を経た後でのこと。当時はそれまでに漬けたことが無いお酒の種類だけを選んで、ただ無心に漬けていました。そしてそれらは、時に不義理ばかりの友人達への贈り物として梱包して届けていました。(ラベルは自作。当時のホームページが記載されています)

もともと菓子作りや梅酒作りは好きで、社会人2年目(2000年)の書店員時代に実家から出て独り立ちした記念として漬けたのが始まりでした(その梅酒も記念酒として残してあります)。


そんな日々が5年ほど続いて、家族の限界が来てお弁当屋さんの契約を延長しない旨を本部に伝えた後、次に生きていくための手段として選んだ「図鑑カフェ」。自宅にあった膨大な蔵書と共に目に付いたのが、そう、梅酒(と果実酒)でした。 恐る恐る、一口づつ利いてみる。

_おいしい_

蒸発するように消えていく日常の手慰みとして始めた自家製梅酒が、他の何にも代えがたい財産として目の前に輝いて見えました。まるで、このときを知って待っていたかのように。

「そのままで充分美味しい高価なお酒を、梅酒にするなんてとんでもない!」
そんな声も聞こえてきますが、通のお客様から愛飲されて現在に至ります。
少しほろ苦い想い出ではありますが、それすらも淡々と乗り越えて熟成されてきた梅酒たちです。重ねた月日を裏切らない、そんな奥深い梅酒の世界でうたかたの夢を見るのも、また乙な夜かと思います。