大人の図鑑カフェ

放送後記:fumikura的『図鑑学』

放送後記:fumikura的『図鑑学』

2024.2.24.
練馬放送「情報番組ねりなび!」(パーソナリティ立花美和さん)
“TAKAHA-C”スペシャルトークコーナー(普段は“ねりまでおでかけ”コーナー)にて、fumikura店長の井守正暁が、『図鑑選書サポーター』として、「図鑑って面白い!」をテーマにお話をさせて頂きました。

余りにも拙く、言葉が足りませんでしたので、改めて【fumikura的『図鑑学』】として、まとめさせて頂けたらとキーボードを叩いています。

というのも、fumikuraは2016年1月7日の開店より一貫して
「図鑑って、こういうものもあるんですよ。」という、広い意味で図鑑に括ってしまえる本や地図なども取り扱い、発信をしてきました。

世間的にも『図鑑の定義』というのは実に曖昧で、百科事典のように学問の体系(シリーズ物)としてズラリと並ぶ物もあれば、自分の趣味やコレクションを勝手に『○○図鑑』なんてタイトル付けをしている著作も山と見かけます。かたや、図鑑を名乗っていない書籍の中にも“図鑑的要素”があるなぁと感じる物もあり、そこいらをひっくるめて

__図鑑って、どういうもの?__

というのを、きちんと ”定義” したい。そう考えました。
『図鑑選書サポーター』がいくら(自称)とは言え、fumikuraなりの『図鑑とはなんぞや』という核とした物が無ければそれは(僭称)になってしまいかねません。

※最初は「図鑑選書アドバイザー」としておりましたが、もっと身近に寄り添えるよう「学びの芽を育むサポーター」として『図鑑選書サポーター』と改めました※

例えば新刊書店古書店に行ってみましょう
「図鑑コーナー」というジャンル別けをしているお店さんはほとんど見かけません。あったとしても、おそらくは児童書の一角に出版社別のシリーズものがまとめて“ドン”とある感じ。
同様に図書館にも行ってみましょう。
ここでもきっと「図鑑コーナー」という分類をしている場所はおそらく「児童書」コーナーの一角にあるかと思います。

ここで、不肖私(井守正暁)の経歴に少し触れてみます。
明治大学文学部史学地理学科地理学専攻卒業(文学学士)。卒業時に中学社会と高校地理歴史の教員免許と測量士補を取得。神保町が本店の総合書店で働きながら科目等履修生として同大学の夜間部(当時)に2年間通い、社会教育主事(学校以外の場での学びをサポートする資格)を取得。司書(図書館サービスの資格)、司書教諭(学校図書館の資格)、学芸員(博物館職員の資格)の3課程の単位もある程度取得しています(資格としては未取得です)。その後、地域創育NPO法人社会福祉法人勤務を経て家業だったフランチャイズ弁当店を父の急逝により継いで法人化。契約満了をもってブックカフェ業態に衣替えしました。

そのあたりの背景については拙文夢見る頃を過ぎても(←読めます)で書いていますので割愛しますが、生涯学習として皆さんの “学び” に寄り添う為の書籍として、ブックカフェを開くとなった際に選んだのが『図鑑』でした。

私自身が生き方に詰まった時分、大いに助けられたのが『図鑑』だった経験もあり、児童書としてではない “大人が読んで楽しい図鑑” を集められたら、息苦しさを感じている人たちに “ホッとした瞬間” や、“新たな発見や人生の余白”“素の自分に戻れる場所” として楽しめる場所を提供できるのではないか? そう感じて【book cafe bar fumikura】が誕生しました。
メニューでも少し図鑑を意識して、独特の言い回し “灯台守りのおやすみ珈琲/デカフェ”,“大人のカルテット(アルコール入り珈琲や紅茶)” を使ったり、写真入りのMenuBookは説明文が多く、さながら “メニュー図鑑” のようでもあり、初来店のお客様は思わず読み入っていらっしゃる方も多かったりします。
※オープン当初よりホームページや店舗チラシに “大人の図鑑カフェ” というキャッチコピー(サブ屋号?)を記載しておりましたが、いつの頃からか耳通りの良い『図鑑カフェ』が一人歩きをはじめたため、それに追いつくように現在は屋号も【図鑑カフェfumikura】に改めています。

fumikuraの語源についても拙文fumikura=文庫(←読めます)に譲るとしますが、どうして『図鑑カフェ』なのか、『図鑑』ってどんなものだっけ? という根本的なことをちゃんと文章で残していなかったことに今更ながら気付いてしまいました(笑)
雑誌の取材やラジオなどでは公に語っておりますが、著作権の兼ね合いもあって、掲載誌原稿や音源を公開することが出来ません。各媒体での初出はそれぞれ下記の通りです。
2018年08月25日発売のコレクター雑誌「CURIO MAGAZINE」表紙&巻頭カラーインタビューfumikuraにとっての図鑑とは博物学(分類学)の結晶(←読めます)※本誌はfumikuraマガジンラックにて読めます※
2018年11月5日生放送のJFNラジオ(TOKYO-FM B-LINE)「simple style_オヒルノオト_」出演時に語った図鑑ってどんなもの?あたらしく広がる図鑑の概念
などがあります。

そうした経緯から、“全ての趣味の先に図鑑がある” という意味で、様々な分野の『(広い意味で)図鑑のようなもの』をひっくるめて著者の視点の先に分類学の要素を見つけた場合に『fumikura的図鑑』として “勝手に図鑑認定をしている” というのが現状です。

そこに皆さんの想像される “昔からの図鑑” を否定する意図はありません。fumikuraでも同朋舎/角川書店の「ビジュアル博物館」シリーズなどはマニアックなので意図的に収集したりもしています。けれど、ほとんど意図的に「シリーズ物」を避けているのは棚をご覧の方には解ってしまうと思います。書店や図書館ではそれぞれの分野のコーナー(場合によっては別フロアなんて事も)に足を運ばないと集まらない『fumikura的図鑑』たちを店長の選書眼によってギュッと凝縮して並べているのが【fumikuraが図鑑カフェを名乗る所以】なのです。

そこに至るまでに、教員の視点司書や司書教諭の視点学芸員の視点社会教育主事の視点書店員や古書肆の視点、そして自分自身がコレクターという視点、自分も図鑑が好きという消費者の視点etc.……。様々な多面的な視点を経験してきた事が選書に大きく反映されている事を特筆しておく必要があるかと思います。そしてfumikuraの棚にある本たちは、全て店長がある程度読んでから棚に入れています。それは、司書が言う “レファレンスサービス” を重視しているからです。

図鑑は何度読み返しても、新しい発見があります。それぞれの分野に “キャッチーで読みやすい1冊” を入れ、そこからグラデーションを描くように隣へ、隣へと読み進められる棚作りを心掛けています。なので、どのお席に座られましても、スッと手に取れる1冊から読みはじめて奥へ奥へと興味が進んでくれたらこれほど嬉しいことはありません。知識が深まっていくにつれて「あ、これってそういう事だったんだ!」「え、これって別の図鑑に書いてあった○○の事じゃない?」というように、連鎖的に知識が繋がっていく快感を、ぜひfumikuraで味わってみて下さい。キラキラと輝くオモチャ箱のように、ワクワクする体験が皆さまをお待ちしています。

また、図鑑は文章で言うと“エッセイ(随筆)”“コラム(意見や感想)”“ショートショート(極めて短い小説)” などとも読後感が似ています。気分転換にあてもなくページをめくり、ふと目にとまった場所だけを読むことも出来ます。そう言えば、高校時代は雑学本やエッセイ、コラム、ショートショートばかりを好んで読んでいました。図書委員でしたが、“書評に乗せる選書に偏りがある” と怒られた……のも、今では良い想い出。古作名著、小説を今でも苦手とする私に教養を期待してはいけません(各方面からのツッコミに対する予防線です)。

この雑記はあくまでも『fumikura的図鑑』という形ではございますが、大仰に『図鑑学』などとのたまうからには一つ“芯”“核”となる思考パターンが大前提。なので、板書形式でA4用紙一枚にまとめたのが最後の図になります。

“図鑑をもっと身近に”“もっと図鑑を面白く”“図鑑が鞄に入る日常” それらを願ってこの雑文を締めたいと思います。駄文を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。※異論・反論は甘んじて享受し、自分の考え方をアップデートできればと思います。お気づきの際は店長までお伝え下さいませ※