「本棚を見ると、その人の趣味がわかる。」
そんな言葉を、耳にすることはありませんか?ついつい気になる、友人の本棚。でも、棚を見るときには、ちょっと気をつけよう、本好きの人間はだいたい、見られたくない本をうまく隠す術を心得ているから。とまぁ、冗談はこの辺にして。僕は本が好き、です。「本が好き」なんて書いてしまうと、なんだか難しい本ばかりを読んでいる嫌味な奴。なんて思う人もいるかもしれないですが、大丈夫、僕の読んでいる本は図鑑や図録、写真集などの柔らかい本ばっかりです。
一般的に、図鑑というと
・物事が系統立てて分類、整理されていて、
・写実的なイラストや写真に、データや資料がついてくる
いわば公平無私な実用書(cf.百科事典)、なんて印象があるかと思います。でも、最近はそれだけでもないんですよね。
自分の趣味のものを、自分の感性で名前をつけ、自分の感覚で分類・整理、そしてデータや文章まで自分の感性で書く。つまりは、一般的な分類とはちょっと違うかもしれないけれど、その人の感性を読んでいるような(広義の)図鑑が、最近はたくさん出版されてきています。
どちらかというと僕は、そういった世界をのぞき込むことが、好きなのかもしれません。こんなことを書いてしまうと、本当にカッチカチの図鑑・図録が好きな方には 怒られてしまうかもしれませんけど、、、
僕が図鑑を手に取るのは、雰囲気を楽しむため、です。夜遅く帰ってきてから、寝る前のひととき。堅苦しい文章を読むのではなく、ぼんやりと果物の図鑑を眺めて「おいしそうだなぁ」と思うのもよし、雑貨や文房具の世界に浸るも、鉱物の美しくも微細な世界に惹き込まれるも、手作り石けんの泡に埋もれるも、遠い海の景色や空の名前に思いを馳せるも、、、うん、良い夢が見られそうな心地で眠りにつけるのが、嬉しい。
朝起きて、枕元に放り出された図鑑を本棚に戻す。大事な大事な本なのに、扱いは結構乱暴、、、なのかな。でも、本棚に仕舞いっぱなしではなくて、こうして夜毎、本を選ぶ楽しみがあるのは、幸せ。だから僕は、自分の本棚が可愛くてしょうがありません。
好きな本は、誰かに勧めてみたくなる。自室の本達も、そう。読まれてこそ、貸し出されてこその本棚、ということで、愛称を込めて「翡翠文庫(かわせみぶんこ)」と名付けていました。
__大した大名蔵書でもないのに文庫とは大仰な__
と、「文庫」の語源や由来を知る人には怒られるかもしれませんが、誰かの「知」の刺激になれればと始めた小さな文庫活動(さながら学級文庫のような)ですので、お目こぼしを頂ければ幸い、ということで。
自宅文庫はいわば「閉架図書館」、閉架書庫には秘密の香りがして、ちょっと捨てがたい感もありますが(笑)、開放的に様々な人に読んでもらうには、あまりにも閉鎖的です。基本的には、お茶や酒でも酌み交わしつつ、他愛なく駄喋り、本を片手に語り合う場でありたい。知識を醸成する学びの場として、文庫機能をどこかに作りたい。
それがいつになるのか、まったくもって明言出来ないところがお恥ずかしい限り。ですが、きっと近いうちに、、、という希望的観測で。ここに備忘録として書き留めておきます。
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<以上、2013.04.18 mixi & facebook日記より部分修正>
この時点では、自分の部屋が来客を拒むほどに汚れていたので、「早く掃除して皆の溜まり場としての文庫機能を復活させたい」というぐらいの軽い気持ちでした。それが、様々な転機が偶然にも重なり、気がついたらbook cafe の開店という形で自宅文庫が世に出る形となりました。さて、ここで困ったのが日記冒頭にも出た「頭の中を覗かれるような恥ずかしさ」です(笑)。親しき友人ならば我が家の本棚など勝手知ったる物。3度の引っ越しも本棚の配置を優先して決めた程なので、好き勝手に本を読んで駄喋るには心地よい空間でした。しかし、お客様の眼となればそうもいきません。自分の趣味色を消すため、苦手だった分野も結構な量の仕入れをしました。どうでしょう、店の本棚から僕の趣味を綺麗に隠せていますでしょうか(笑)
「文庫なのに、売っちゃっていいの?」とも、友人にはけっこう言われました。苦労して、それこそ何十年も掛けて集めてきた本には愛着があるでしょう?と。確かに、最初の半年は売らないつもりでしたし、半年後とは言いつつも売る勇気もありませんでした(笑)でも、book cafe は生き物です。棚の新陳代謝が無くなれば、本は古び、棚が古び、知識は錆び付いていきます。いつ行っても同じところに同じ本、という安心感は図書館にお任せすることにして、「これだけは外したくない」という本は別ルートから仕入れ直し、それ以外はなるべく同じジャンルで新しい本に取り替えていくようにしています。なので、お気に入りの本は一期一会、お手元に残したい本は早いうちにお買い上げ下さいませ。(宣伝)
【大人の図鑑図書館】というキャッチフレーズについて。
文中でも触れていたように「疲れて家に帰っても読める本」として、僕は図鑑が好きでした。ビジュアルが多い本は、文字に煩わされず単純に好きな世界に飛び込めるからです。また、いくらビジュアルが中心であっても、そこになにがしかの言葉があり、心の余裕があるときには、キャッチコピーや文中の解説に手が伸びる。こうして少しずつですが、興味や趣味の幅が広がってきました。図鑑というのはさりげなく凄いことをする物で、最初はビジュアルを眺めるだけでも、自分の興味が膨らむにつれて、そのレベルを引き上げる解説が必ず付いてきます。一冊隈無く読み終える頃にはその分野の専門書に手を伸ばしたくなっているぐらいですから、その構成力は見事だと思います。手に取りやすく、気づけばハマる。そして、インターネットのサイトが単一分野を掘り下げる事が多い事に比べ(一概にはそう言えない良サイトも数多くありますが)、周りの分野や文化にも手が伸びているので、気づいたらあれもこれもと手を付けたくなる。そうして手に取る本が増え、興味や趣味の幅が広がり、かつ、知識の層が厚くなってくる。(店主の知識は広く浅いへっぽこポンコツですが)
その入り口となる一冊の本に出会える場所を作りたい。できれば、同じ趣味の人が本を片手に茶や酒を酌み交わせれば面白い。そんな小さな文庫機能のあるcafe bar それがfumikura(文庫)と名の付くbook cafeの、由来です。