毎年、fumikuraの夏と言えば【ぼくの夏休みフェア】(2016年)(2017年)(2018年)です。そして、「ぼくなつフェア」に欠かせないのが “サイダー” です。本年はフェア開始の先触れとして、今年も「fumikura生サイダー」を御提供致します。昨年と香料の配合を若干調整し、更に進化した生サイダーをお楽しみ頂けるかと思います。毎年エスカレートしていく『誰得?』とも言われる「謎のサイダー推し」は単純に店長の趣味による産物ですので、御勘弁頂けたら幸いです。ごめんなさい。
通常、「三ツ矢」サイダーと、珍しい地サイダーを併売するのがこのフェアの特徴だったのですが、本年は趣味人の一つの到達点とも言える【自家製サイダー】を全面に推しだし、飲料メーカーにPBを委託するOEM生産ではなく、お客様の目の前でサイダーを生成する「化学実験そのもの」のパフォーマンスと共に、カラフェもしくはデキャンタにて御提供致します(400mlで500円です)。表題に「”生”サイダー」と書かれているのはそのためです。
「サイダー」と「ラムネ」の違いはご存じでしょうか。 恐らく、ですが、瓶の形で区別なされているのではないかと思います。(玉留め瓶がラムネ、それ以外のクリア系炭酸飲料がサイダー、というように)
実は大手飲料メーカーの、いわゆる三大サイダー「Asahi三ツ矢サイダー」「キリンレモン」「ポッカ&サッポロ リボンシトロン」の中で、本当にサイダーと呼んで良い物は「三ツ矢サイダー」のみ。というのも【サイダー】の語源は「シードル(Cider)」で、フレーバーはリンゴを基本にパイナップルなどが入っています。(現在は三ツ矢も〇〇サイダーという季節限定品が多数出ていますので、あくまでもプレーンタイプを基準とします)一方の【ラムネ】の語源は「レモネード、リモナーデ(Lemonade)」ですので、フレーバーは明確にレモン類(シトロンやライム、ベルガモットもレモン類)となります。と、考えると名称にレモンやシトロンの入っているキリンレモンやリボンシトロンは“厳密に言うとサイダーではありません”。
こんなにサイダーが好きなのに、近年の地サイダーブームに私が背を向けて久しいのも、地場産の果実に炭酸を入れるだけで「サイダー」を名乗ってしまっている例が多々あるからです。(そもそも本当の地サイダーは生産量が少ないので現地で飲んで瓶は返すスタイルです。)土産品としてアピールするために、地元の特産品や水を余所の工場に運んで生産をお願いするいわゆるPB/OEM方式があまりにも増加したため、“地元”サイダーとは??という意味で若干距離を置いている状況です。”青春飲料”、”爽やかで混じり気が無い”といったイメージに頼って居るのが透けて見えるのがなんとも、、、)
で、「そんなに好きなら、YOU作っちゃいなYO!」などという事はもう10年も前から言われておりまして、実は開店と同時にオリジナルサイダーを商品化出来るよう、練馬にも配送可能でOEM(受注生産)・PB(プライベートブランド)に対応されている中野区の某飲料メーカーさんの見学と交渉にも出掛けていました。(没になっていますので名前は伏せさせて頂きます)が、1ロット600本、香料は工場にある物の中から選定という縛りが厳しく、さすがに賞味期限内に自店のみで捌ける自信も無く、夢は泡となって儚く消えてゆきました。(サイダーですからね、、、)
しかし、そこで諦めないのが店長の執念。それじゃあ「ポン水(戦前のラムネの俗称)」ぐらいなら自作出来ないか?と、設備投資の掛からない化学反応でサイダーを作ろうという暴挙に出ます(相変わらず頭がどっかオカシイと感じた皆様は多分正常です)。食品添加物として認可されている「無水クエン酸(食用・食物由来)」と「重曹(食用・炭酸水素ナトリウム:食物由来)」を混ぜて果汁を入れれば弱炭酸ながらサイダー風飲料が出来ると確信し(参考:日本飲料水協会「日本飲料水史」のレシピ)、開発作業に入ります。(上の写真は戦前のラムネ瓶「俗称:きゅうり瓶」英国製)
ココで問題となるのが弁当屋時代に鍛えられた「認可されている添加物でも、混合すると人体に有害な物質が生成されてしまう場合がある(例:清涼飲料水ベンゼン事件)」ということ。また、無害・有害の基準値は時々刻々と変化しており(甘味料チクロが有名ですね)、その基準は管轄官庁の確認を必要とする、、、ハズ?
ということで、添加物の使用基準に関する行政文書を探してみると、、、やっぱりありました。東京都福祉保健局の「食品添加物の使用基準と成分規格」や厚生労働省の「食品添加物ホームページ」。この指針に沿った上で、所管保健所の該当部署に個別使用量等を報告し、生成物の毒性審査の上で安全認証を受けて御提供しております。見た目は怪しいかもしれませんが、昔からご家庭でも簡易的に作られていた方法です(悩んでいる時に「アメリカじゃボーイスカウトのバザーなんかではバケツで作ってるわよ。」とも言われた。やりかねない、、、)、安心してお飲み頂ければ幸いです。
<化学反応式>
NaHCO3 + C3H5O(COOH)3
→NaH2(C3H5(COO)3) + CO2 + H2O
<↑クエン酸一ナトリウム(塩基なので塩っぱいです)>
そして今度は肝心要の “味”でございます。設備を整えて炭酸を封入出来るようならもともとこの方法はとりませんが、「ちょっとお客様にも化学実験みたいに楽しんで貰いたいな」ということで、作ってみると化学式通り、どこかに塩気が残る、、、そこで、100%ジュースを加えたり、様々な材料を用いてできるだけ塩気を消すように努力してみました。弱炭酸ではありますが、グラスに注ぐ度にシュワシュワと新しい泡が生まれます。その感覚と共に楽しんで頂ければ幸いです。
また、今回はあまりにも化学科学し過ぎて怪しさ大爆発なため、2年前に「ビーカーくんとそのなかまたち」の新刊サイン本フェアでお世話になりました「うえたに夫婦」様の【ビーカーくんビーカー】を使用させて頂きました。(※上記写真もうえたに夫婦さまのホームページより拝借致しました。珈琲など色味の濃い物の方が映えますね!こちらの理科実験用具図鑑や絵本も店内にございますので興味を持たれましたらお尋ね下さいませ!※)
<ビーカー作者さまのご紹介>
・うえたに夫婦(uetanihuhu)
奈良県出身。京都のラーメンが大好物。研究職として勤務するかたわら、実験器具をキャラクターにすることを思い立ち、ビーカーくんとそのなかまたちシリーズを制作。そのやわらかなキャラクターは、ジュンク堂書店や東急ハンズをはじめ、雑貨店やイベントなどで好評を博している。好きな実験器具はやっぱりビーカー。
著作:『ビーカーくんとそのなかまたち』『ビーカーくんと放課後の理科室』『ビーカーくんのゆかいな化学実験』『ザ☆単位のマンガ』『なぜなぜ?かいけつルーペくん』など。グッズもやわらか可愛いものばかり。ホームページでの販売やイベント出店情報なども配信されています。ぜひご覧になってみて下さい。
HP:http://uetanihuhu.com
twitter:@uetanihuhu