大人の図鑑カフェ

テンタカクウマコユルアキ

テンタカクウマコユルアキ

598642_258319704290472_1250184409_n、、、すっかり初冬になってしまいましたが、10月23日に行われたミニプラネタリウム『秋の星座を彩るエチオピア王家の物語』について、ちょっとしたエピローグを。

1989年、私がまだ中学一年生の頃、こんなエピソードがありました。何てことの無い拙いお話になりますが、どうしてこのプラネタリウムに力を注いでいたか、お判り頂けたら幸いです。(アイキャッチ画像はプラネタリウムではなく、中学3年次に制作した直径2mの発光星座盤。蛍光塗料と蓄光塗料を使用し、ブラックライトで光ります)

 

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この言葉を【天高く馬肥ゆる秋】と変換できたのは、いつのことだろう。
いつまでも忘れない、
私が夜空に惹きつけられた最初の言葉。

中学1年秋、文化祭前夜。
『弟、お前明日までにコレ、出来る限り覚えてきてくんないかな。』(※注:2学年上の兄も同じ部活に在籍していました)
先輩は相変わらず唐突に、こう宣いながら1本のカセットテープを私に押しつけた。【プラネタリウム解説の手引き】というような題名の貼られた、1本のテープ。

部の予算を大量投入して購入された電池式プラネタリウム。肝煎りのハズの、新品ぺっかぺかのイカした投影機。にもかかわらず、誰一人星座の位置や神話を覚えていないと気付いたのは、そう、文化祭前日の夜だった。

『模型の方が、な。終わんないんだよ。』
先輩は皆、展示模型の製作に追われていた。目が血走っているどころの話ではなく、半狂乱の有無を言わせない迫力の前に、テープの行方は既決の事項だと悟った。下働きが一段落してプラプラしている下級生に拒否権は無い。しかも中高一貫校、中学一年生から見る高校三年生は、もはや『神』でしかない。(神様にも色々居る訳ですが、、、)

さて。
持ち帰ったテープを睨んでみる。全天の星座は88。テープはみっちり60分。出来ないことではないかもしれないが、一夜で覚えるにしては量が多すぎる。私は躊躇わずにB面をセット。「今の季節は秋なんだ。他の季節は覚えない。広く浅くてもお客は喜ばない、偏っていても人を唸らせる深さに重点を置きたかった。」そんなのは先輩を丸め込む言い訳に過ぎないのだけれど、さすがにこの時ばかりは黙認されたように、記憶している

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その言葉は、テープから流れた女性ナレーターの第一声。いかにも説明調で古臭い台詞ばかりが流暢に流れて行くのだが、それを学生語に翻訳するだけの能力が無い私は、意味がわからずともひたすら丸暗記するしかなかった。今思うと、そんな状態で講釈を垂れるのだから、とんでもなくクソ生意気なガキである。

エチオピアが何処かも知らず、がむしゃらに覚えた王家の神話。王ケフェウス・王妃カシオペア・王女アンドロメダ・勇者ペルセウス・天馬ペガサス・怪物メデューサ&ゴルゴン三姉妹・化け鯨、、、全天を駆ける壮大なストーリーは、確かに星を見る者の想像をかき立てる。

翌朝は早朝に学校に忍び込んで星座の位置を詰め込み、本番。
プラネタリウムという暗室で、マニュアルを見ることもできずに上演した初回の緊張、そしてそれを何とか乗り切った充実感、得も言われぬこんな快感は、忘れられない。(出来がどうだったかというのは別として、、、)

それから6年間の部活だけに留まらない、今に至る星見の系譜の、原点。すべてはこの古臭い台詞から、始まった。

「天高く馬肥ゆる秋。」
今日も昼光が落ちてゆき、夕焼けのランプが点る。
空に輝く一番星を探さば、あの頃のBGM(ジョージウィンストン版のパッヘルベルのカノン)が頭を流れてゆく。
暮れゆく空に、瞬く星々。
たまには心を空(カラ)にして、
見上げてほしいと思うので、あります。 ( 遊覧航路 2003.10.01の日記より引用)

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・1992年秋より、
 【ASTRONOMY(天文学)】という文化祭冊子の発行を開始。
 展示物の解説(いわゆる模造紙解説)をプリントにしただけでなく、
 部員自身の解説の手引きとして重宝する存在となった。
 その冊子の第2号『プラネタリウム解説のために』では、
 全天88星座の完全解説を試みた。
 ワープロ(一太郎)の罫線機能を用いて星並びや位置図を掲載した労作。
 いや、これで実際ほとんど夏休み潰れましたし(T_T)。
 今読むとかなり不完全で笑ってしまいますが、
 来校者にも割合好評で、翌年には誤字脱字や文章の捻れ・不備を改訂。
 更には用語索引までくっつけて、中高6年間を締め括った覚えがあります。
(その後3年間に亘り増刷が発行)
・今回のプラネタリウムの手持ちパート(「オチ」担当)でも、この冊子の文章に手を加える形で喋らせて頂きました。愉しんで頂けましたら幸いです。

img_1415以下、今回のプラネタリウム開催にあたり、参考にさせて頂いたネタ本です。

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