大人の図鑑カフェ

天文教室レポート

天文教室レポート

IMG_0907去る8月21日(日)、19:00-20:00まで当店貸し切りにて、当店主催による夏休み天文講座『地球を飛び出せ!宇宙探検』トークイベントが開催されました。このたびは飲食店にもかかわらず、自然科学研究機構 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト内
4次元デジタル宇宙プロジェクト様のご厚意により、科学館やプラネタリウム向けの天体ソフトシュミレーションmitakaや4D立体視映像の使用許諾を頂戴し、当店が通常月一回上演しているプラネタリウムと異なり、地球の外側に張り付いている天球の星座の概念を破り、地球を飛び出して宇宙の果てまで探検するという意欲的なプログラムでした。

ただ、いかんせん、アマチュアである私が知らない方々の前で講釈をたれるというのが教育実習で教壇に立った20年振りの出来事ですので、途中でしどろもどろになったり、お聞き苦しい点も多々あったと存じます。その点はご容赦下されば幸いです。

<反応>
・知らない人の前で講釈を垂れるのは教育実習以来の20年振りでした。
 脚本はしっかり作ってリハーサルもしていましたが、初手よりかなりまごつきました。
 進行表にあるように、
 小学校高学年~中学生にしては若干レベルを高く設定してあったため、
 対話形式に最初はなかなか返答が貰えないかと思いきや、
 「地球から見て一番明るい星は?」に対して
 「シリウス」との答えが返ってきたり(小学5年生)、
 賢く、勉強してきた手ごたえを感じました。(残念ながら正解は太陽でした、、、意地悪でごめんなさい)

 今回はプラネタリウムと今回のソフトmitakaの違いを鮮明にするため、
 「天球」という概念を教え、
 それを打ち破って外に出ることを重点に解説を行いました。

 地球を離陸し、太陽系を見下ろした時点で少し歓声が沸きました。
 太陽系の岩石惑星とガス惑星の違いは「パッと見」での違いは解ったようですが、
 内容に関しては、まぁ、仕方ないかなという感じでした。難しかったですよね。

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 惑星の序列の話で、父兄向けに「土天海冥」「土天冥海」そして冥王星の準惑星落ちの話を持っていきましたが、公転軌道の話などは子供には少し難しすぎたので切り上げて次へ。(このあたりで子供に私語が出始めてダレてくる)

・太陽系から離れて一等星が登場する辺りで活気が復活。上下左右にぐるぐる回すと、
 同じ星座の中でも距離がずいぶん違うことがハッキリわかった様子。
 そのまま3000光年付近までスノードームの中にいるような探検感に胸を躍らせていました。

・銀河系へと話が移ってくると、天の川と銀河の円盤構造の位置関係は掴めたようです。銀河群や超銀河団の話は参考程度にサラッと流し、スポンジ状にバラつきがあることと、宇宙の果てまで超特急で進んだところで残時間が15分でした。明らかに詰め込みすぎでした。

・この後急いで太陽系に戻り、3台ずつ立体視鏡を使い(子供優先)、
 mitakaでの惑星の距離感を体験(ここで「オオーッ!」と歓声が上がる)。
 その後お作り頂いた左右分割の各画像の立体上映。父兄も立体鏡を譲り合って視聴。
 月の出来方はなんとなく解っていたようですが、
 土星の輪のwake構造1や、原始惑星の衝突、特に渦巻銀河の形成は父兄にも人気が高かったです。

IMG_0917<結果>
・予定時間を10分ほどオーバーして、何とかギリギリ予定量はクリアしましたが、
 トークの点数をつけるとすれば65点程度で、あまり上手に喋る事は出来ませんでした。
 ただ、お客さんの反応を見ながら脚本に無い小ネタを挟んだり(大人向け)しながら、終始和やかに進めることが出来ました。

 驚いたのは、一旦解散を掛けたのですが、その後の天体に関する質問が相次ぎ、
 オプションとして解説の時間を大量に割き、
 結局23時の閉店までお客様が残っていたことです。(4時間喋りっぱなしでした)

 質問例としては
 ・月の裏側の地形を見てみたい(新月時に太陽側から見せました)
 ・春分の日や秋分の日、年によって12星座の境目が変わるのはなぜか?
  (時間幅を1年に設定してちょっとずつズレていき、
   閏年に元の位置に戻ることで説明)
 ・南半球と北半球の星座の違いの説明と、ギリシャ神話と縁の無い星座の説明。
  (ラカイユなどの戦犯(笑)と、
   星座区の境界を示して天球にも地図があることなどを説明。
   また、アルゴ座の分割や四分儀座などちょっと古い星座にも触れました)
 ・また、南極大陸に降り立ち、白夜の体験をしたり
 ・天王星に着陸して地球を見たり(距離の問題で星座の形がほとんど変わらないなど) 

 ・太陽系の各惑星の特徴などもお客さんの質問に応じて移動と概況の説明
 ・アダルトな質問では太陽系中心の部位ラックホール探検中に、
  ブラックホールに吸い込まれた物質がどうなるのか?なんてのも出てきました。
  (ガンマ線や素粒子、ニュートリノなどの説明をサラッとノーベル賞に絡めて。)
 ・あとは、太陽系外縁天体であるセドナについては
  「まだよくわかっていません」で切り抜けましたが、
  その後、mitakaを紹介して頂いたお客様の来店により、その軌道があまりにも楕円にズレているので、
  影響を及ぼしている発見されていないほかの天体の存在が示唆されているとの説明
  受け、助けられました(笑)

  あとは再び立体視体験などで存分に楽しんでらっしゃる様子でした。
  初回ということもあって、拙さの残るイベントとなりましたが、
  子供さんよりも大人が突っ込みを入れつつ楽しむ、和気藹々とした楽しい空間を作ることが出来ました。

  やはり、4D立体視としてのアトラクション的な映像空間の体験が、子供、そして親御さんに与えた影響はインパクトの強いものだったと思います。
  
  改めまして、快く申請を許諾して頂いた国立天文台の皆様に厚く御礼申し上げますと共に、今後ともさまざまな企画を通してmitakaおよび4D2Uナビゲーターの普及に取り組んでまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

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<プログラム台本より>
謝辞
・配付資料・許諾事項の説明
 :4D2Uプロジェクトについて(データ出典)
 :使用ソフト・映像について

・語り出し
 小さな事ですが、ここの所、大人も子供も俯き加減で歩いている姿を良く目にするようになりました。携帯端末の普及を悪く言うつもりもないのですが、それ以外でもぼんやりと足下ばかりを見て歩いている姿を見ていると、外は良い景色なのに勿体ないなぁと感じてしまいます。例えばですが今年の夏、皆さんは虹を見ましたか?夕立の後にスックと立つ虹にも科学的な原理があります、誰もが「わぁ」と声を上げる虹、その気配を感じる事が出来たらどれだけ素敵でしょう。星空もそれと同じです。流星群などの大きな天体現象はTVで話題になり、親しむ方も増えてきました。雨上がりの思いがけない晴天に、多くの星々がきらめく夜もあります。今回は地球を飛び出す宇宙の旅をテーマにしていますが、願わくは皆さんが、町中でふと立ち止まり、日常の中で季節の移り変わりやちょっとした楽しみに目を向けて貰えるような、そんな会に出来たらなぁと考えています。拙い解説となりますが、最後までお楽しみ頂ければ幸いです。

・mitaka使用
 :プラネタリウムモードを起動(今夜の星空・明るい銀河・明るい恒星に設定)
  ぐるりと回転させて東西南北を一週
  時間表示(1日)で時刻を進め、季節の移り変わりを体験(すぐに現在時刻に戻す)
 :星座名を表示→星座線を表示→星座境界を標示(すぐに消す)
  ▲質問:星座は天にいくつあるか知っていますか?

  星座には88星座があり、北半球と南半球で見える星座が違うことを話す。
  星の明るさの等級について話す。→実視等級と絶対等級の伏線
  (小話で一番星と一等星の違いもちょい)

  ▲質問:一等星は全部でいくつあるでしょう?(21個)

  プラネタリウムでは、これよりずっと詳しいですが星座の解説したり、
  地球上の場所を移動して、その場所で見える星座を教えてくれます。
  星の色などで、星の温度などの基礎知識を教えてくれるところもあります。
  地球を覆うガラスの様なモノに、星が同じ距離で張り付いている様に見えます。
  これを「天球」と呼びます。
  実際の距離なども数字で教えてくれます。

  ▲質問:双眼鏡や望遠鏡で実際に星を見た事がある人はいますか?何を見ましたか?
  プラネタリウムと違って、天体望遠鏡で観ると、
  ひとつひとつの星(例えば惑星)が遠いか近いかが、倍率としてちょっと解ります。

  でもそれは体感、というより、数字と頭で理解しているということ。実感が湧きにくいですよね。
  今回はちょっと違う方法で、宇宙の「大きさ」を学んでみましょう。

 :方角を北に向け、時間間隔を(1分)に設定し、「東を向け」
  実際に時間を進め、朝を迎える。
  さて、朝が来ました。プラネタリウムでは朝が来たら星の観察はおしまいです。

  ▲質問:でも、なんで朝が来たら星が見えなくなるのでしょう?

  そうです、太陽が明るすぎて、他の星が見えなくなってしまうんですね。
  では、太陽は何で明るいんでしょう?
  思い切って、地球を飛び立って調べてみましょう。

・太陽系の説明に移る
 :地球を離陸、(明るい太陽に設定)
  地球の周りをぐるりと一週して、昼と夜の違いを斜め上から見た後ズームアウト

 :ズームアウトして太陽が見えてきたら、中心点を太陽に設定
  ▲質問:先ほどの話ですが、
  少し意地悪な質問をしますね。
  地球から見て一番明るい「星」がなんだか解りますか?(答えは太陽)

  ここで「恒星」「惑星」「衛星」の違いを説明
  ついでに「天文単位」について説明。

 :ズームアウトして小惑星帯まで表示。明らかに異質な小惑星帯。
  ここで「準惑星」「小惑星」「彗星(ほうき星)」の説明
  年月を進めて公転の説明。

 :ズームアウトして冥王星付近まで拡大(明らかにデカイ木星)
  ▲質問:ずいぶん大きな惑星が出てきましたね。
      いままでの惑星とどこが違うと思いますか?

  ここで「地球型惑星」と「巨大ガス惑星」「巨大氷惑星」の違いを説明。

  ▲質問:さて、ここで天の川方面を見てみましょう。
  なんなら天王星に着陸してもいい。年数を進めてもいい。

 :さらにズームアウトして、太陽系外縁天体、エッジワース・カイパーベルトを表示

  ここで準惑星(冥王星型天体)&太陽系外縁天体の説明
  新しく発見される天体に期待感を示す。
  ぐるんぐるん回して、各惑星の軌道がおおむね揃っている事を確認。
  →太陽系は小さな円盤構造(太陽圏/暴論ですが地球で言う大気圏バリアとの説明)
 :さらにズームアウトして、オールトの雲を表示。

  ▲もう、この辺りになると太陽系の惑星は見えなくなってしまいますね。
  もうちょっとズームアウトして太陽系の外縁(130~160天文単位)

・銀河系の説明に移る
 :更にズームアウトして「1光年」を表示。
  今までの天文単位は「太陽系」のみに使われる単位だと教える。
  ▲光速で進め!とか冗談で言いますが、光は1年でここまで進みます。

 :ズームアウト「3光年」を表示。
  ▲質問:ポツポツと星が見え始めました。この一つ一つが、太陽と同じ「恒星」です

   さて、一等星ほお話しもしましたよね?
   太陽が明るく見える訳の話もしました。
   星が明るく見える原因のひとつは「近い」からですね。
   このあたりから、夜空に輝く一等星達が顔を出し始めます。
   早速、太陽から一番近い恒星「ケンタウルス座のα星」が見えてきました。
   反対側にはみなみのうお座の「フォーマルハウト」も見えています。
 (太陽系の円盤に対して上にあるのが北半球の一等星、下にあるのが南半球の一等星)

 :ほんのすこしずつズームアウト、
  アルタイル、シリウス、プロキオンが見えてきました。いずれも一等星ですね。
  おや、ポルックスやベガも見えてきましたね。
  お、カストルが見えてきました。こちらは2等星で一番近い星ですね。
  同じ双子座なのに、こんなに離れているんですね。

 :100光年と300光年の間ぐらいで「ヒアデス星団(牡牛座)」が見えてきました。
  このあたりで執拗にグルグルする。
  昴に行って太陽中心に戻したりしながら1000光年までズームアウト。

 :1000光年の公転面を水平に持っていくと、星の分布もこの面に沿っている事が解る。

  この辺でもグルグル。銀河系の中心方向も見る。たくさん星が見える。

 :3000光年
  さて、宇宙全体にモヤが掛かってきました。
  実を言うと、現在の観測技術で恒星の位置が特定できている最長地点が
  このあたりなのです。

 :太陽系を上から見下ろしつつズームアウト。銀河の腕がうっすら見える。
  そのままズームアウトすると、1万光年の輪と共に、銀河系の全景が見える。
  太陽系が銀河の端っこにあることが理解できる。天の川の正体ですね。
  渦が円盤状になっていること
  →円盤の中心方面が天の川上下方面は厚みが無いので星が少なく見える。
  渦の雲の濃いところに星が集まっている事を説明。

 :10万光年の輪が見えてきました。

  銀河の中に恒星が集まっていることはお話ししましたよね。
  ここから先に見える点々一つ一つは、銀河です。
  銀河は近い銀河で「銀河群」さらには「超河団」のネットワークを作ります。
  ここまでくると、途方も無い時間と距離になってきていますね。
  「大マゼラン」「小マゼラン」は銀河系の伴銀河です。
 :大きくは「アンドロメダ超銀河団」に属します。

 :更に広く見てみましょう。扇形に見えるのは、地球から現在はこの範囲しか観測でき

  ていないからです。スポンジ状に銀河の多い場所と少ない場所があることが解ります。
 :そして、138億光年の向こう側、これが現在解っている「宇宙の果て」です。
  宇宙の果ては、138億年前の姿。宇宙はこの時に誕生したといわれていますが、、、
  難しい話になりますので宇宙の旅はここまで。急いで太陽系に戻ります(笑)

 :惑星表示を等倍に戻し、各惑星の衛星を表示してみせる。
  そのほか、リクエストに応じて各惑星への旅。

・そして4D2Uシアターへ。
 ・月の形成
 ・微惑星から地球型惑星へ(地球型惑星の形成)
 ・土星リングの力学 (I. wake 構造)

・最後に3D立体視ツアー。

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◎許諾:この度の天文教室開催にあたり、下記団体様よりソフト・映像プログラムの使用許諾を頂きました。また、左右分割方式の立体動画映像は、国立天文台様のご厚意により、特別に製作して頂きました。厚く御礼申し上げます。

●使用ソフト・映像コンテンツクレジット
許諾元:国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
http://4d2u.nao.ac.jp/t/

<天文ソフト>
 ・Mitaka(個人で楽しむ分にはダウンロード・使用共に無料です)
  プログラム:加藤恒彦
  国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
  入手元:http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/

 ・4D2Uナビゲータ(ウェブブラウザ上で表示)
  プログラム:小阪淳
  国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
  表示元:http://4d2u.nao.ac.jp/t/var/4d2unav/  

<映像コンテンツ>
 ・渦巻銀河の形成 ver.3
  可視化:武田隆顕・額谷宙彦
  シミュレーション:斎藤貴之
  国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

 ・月の形成
  可視化:武田隆顕
  シミュレーション:Robin M. Canup(Southwest Research Institute)
  (巨大衝突)
  武田隆顕(月集積)
  国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

 ・微惑星から地球型惑星へ(地球型惑星の形成)
  可視化:三浦 均
  シミュレーション:
  小久保英一郎(惑星形成)
  玄田 英典(巨大衝突)
  国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

 ・土星リングの力学 (I. wake 構造)
  可視化:武田 隆顕
  シミュレーション:台坂 博
  国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト



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