「新年が明けたら、【星座と神話の世界フェア】が始まります。」
って、昨年末に書いていたのですが。
ご存じの通りしばらく休業状態にあったfumikuraです。
感染拡大状況などを観ながら開けたり閉めたりしていたので記事化していませんでしたが、フェアは年明けより始まっておりまして、店頭ディスプレイやフェア選書も済んでおります。
(ので、1/13~2/1までは僅かな期間ですがご覧いただけました。)
ほぼ3ヶ月に近い期間の休業を挟む事になりましたので、
フェアは休業期間分を延長して6月末日までとなりそうです。
こちらでは、フェア概要のお知らせです。
<フェア内容>
①店頭展示
・ギリシア神話神像3柱(ヘルメス、アフロディーテ、ニケ)
・全店星図
・星座コイン(双子座・天秤座)
・ベルギーの硬貨(ヘルメス50フラン銀貨・カドゥケウスの杖1フラン)
・Moonologyのオラクルカード(星座プリント柄)
②フェア本
・星景写真集
・別冊Newtonの宇宙解説本
・宮沢賢治童話集・ギリシア神話など文学
・野尻抱影の星座民俗学
<概要>
せっかくギリシア・ローマ路線で行くなら、神像は一柱でも大きい物が必要だよね……。
という話になりまして、レダとゼウス の絡み、エロス(青年バージョン)やゼピュロス(東風)ボレアス(北風)とニンフの絡み、
アポロンとダフネの絡み(これはオリンピアの月桂冠の由来なのでオリンピックフェアにも使える)など”絡み=エロ”路線、
はたまた法律事務所系などに置かれる公正の神テウス、アテナ、英雄ヘラクレス、ペルセウスなども候補に上がりましたが、
裸体が過ぎたり勇猛果敢のゴリマッチョってのはどうも店としっくり来ない。
店自体が女神や勇士と言うよりトリックスターのスタイルなのでヘルメス(商業と弁舌&泥棒の神)に決まりました。
<神像について>
・ニケ(NIKE)は綴りの通りスポーツメーカー「ナイキ」の社名の源で、勝利の女神。ルーブルのニケ(サモトラケのニケ)も複製が数多出品されていましたが、流石に首が無いのはねぇ……。(日本的に言えば”首が回らない”に通じる)てなわけで造作的には若干質が落ちますが、これはこれで好きかもってやつをチョイスしました。(「サモトラケのニケ」は江古田の日本大学芸術学部校舎のエントランスで見る事が出来ますのでそちらも是非どうぞ)こちらはブロンズかダイキャスト。月桂冠を掲げて祝福している姿はなかなか魅力的です。
・アフロディーテ(ローマ神話名・ヴィーナス)
ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」(ウフィッツイ美術館蔵)がモチーフのようです。ギリシア製の印がありますのでお土産品と思われます。大理石では無いですが、やや硬度の高い陶器(磁器まではいかない)と思われます。
アフロディーテの誕生神話に関しては諸説ありますが、どれもこれも”放送禁止用語”が多数含まれるため、こちらでは割愛致します。鼻筋の通った文字通りの西洋美人さんの彫像です。(結局裸体を仕入れてしまいました)
・ヘルメス(HERMES)(ローマ神話名:マーキュリー)
ピーターパンのモデルでもあり、商業に弁舌、情報伝達に空を縦横無尽に走り回る神。好奇心旺盛でちゃっかり欲しい物は手に入れる。弁舌だけでなく、どこか憎めないキャラなので単なるおべんちゃらに陥らない、なかなか強かな神さま。守護星座である双子座の生まれというのもありますが、どうも私と馬が合う気がします。 一見ブロンズ像に見えますが樹脂と石粉を混ぜて焼き、ブロンズ風に着色した物です。 アトリビュート(その神様を象徴する持物・宝物)として空飛ぶ靴(羽の生えた帽子)はペルセウスのメドゥーサ退治に貸し出され、鳥の羽根が生え頭に蛇が絡みついた杖はカドゥケウスという知恵の象徴。確か医学の神アスクレピオスに渡したんじゃなかったっけ。そんな訳で、たまに病院のマークや商科大学にカドゥケウスの杖が描かれているのはそんな理由。発明の神でもあり、一説によれば火もヘルメス(マーキュリー)の発明だとか。その目にも止まらぬ素早さからか、太陽の一番側で公転周期が短い水星を任じられています。
そんなヘルメスは泥棒の守護神としても凄腕として神話に描かれています。商業は時に狡猾さを伴います。情報と弁舌を司るヘルメスが、泥棒や詐欺の神とまで伝わる所を見るに、そのバランスの危うさへの警鐘が含まれているのは想像に難くありません。そんな思想が日本に無かったかと言えばそうではなく、奇しくも当社の社名や社是である「三方善(さんほうよし)」という言葉を産んだ近江商人の商訓に見て取れます。こう言った話は一見すれば【こじつけ】に感じるかもしれませんが、一理が万理と言うか、商売の不変則を表す好例だといえるでしょう。
翻って、星座や神話世界を数多紹介して、そこに見られる万国共通の普遍性を炙り出せば、人類の思想の共通項を探る比較文化の面白味が生まれると私は思うんですが、多分そこまで掘り下げたフェアは難しいでしょう。圧倒的に私に知識が足りない。とりあえず、今回はヘルメスを一点突破口としてどこまで伝えられるかが鍵になるのかなと思います。
いや、普段から店でこのような話を喋る方では無いし、小難しい話をするつもりは無いので、選書の表紙だけでそれを語ったり、理解して貰おうと言うには無理がある。ともあれ、いつも何気なく並んでいるフェア本と、関連グッズのディスプレイの裏には、こうした他意を含ませていたりします。
<ベルギーとヘルメス>
ベルギー王国時代のアンティーク硬貨に、頻繁にヘルメスやアトリビュート(仏教やキリスト教で言うところの持物や象徴図案)のカドゥケウスの杖が登場するんですよね。何だろう。という事で少し調べてみました。
私はファッションやブランドにあまり興味が無かったので最初は気づきませんでしたが、エルメス(HERMES)ってHの発音してないだけだよね、、、
ベルギーの会社さんでしたのね、気づきませんでした。
でもこれも厳密にはちょっと違って、
どうやらアントワープにある王立商業高校(大学?)が商業神であるHERMESのカドゥケウスの杖を校章にしたあたりに端を発しているっぽいです。
日本の一橋大学が商学校として開校した際に、アントワープ商学校の出身教諭によってカドゥケウスの杖が校章に定められた事からもバックグラウンドはその線が有力かなと思います。
1枚目、1948年発行の50フラン銀貨。ヘルメスの横顔(羽帽子姿)とカドゥケウスの杖が描かれてます。
2枚目、1923年の1フランニッケル貨。これもカドゥケウスの杖ですね。
<詳細>
星座と一口に言う場合、お馴染みの西洋88星座を指します。
1922年IAU(国際天文学連合)により採択され、1930年に星座の境界線を含めて確定されたものです。
基本的にはギリシア神話をベースにしていますが、
星座の誕生地とも呼ばれる古代メソポタミア(イラク)を源に、
文化・文明の移動伝播により様々な土地の民話や神話を統合しながら
ギリシア・ローマ、そして現代と受け継がれ、発展したものです。
と、なると。
北半球で発展した中東や西欧的神話群(ギルガメシュ叙事詩・ギリシャ・ヴァイキング・ケルト)とは別に、 他の3大文明(ナイル・インダス・黄河)に端を発する神話や星座や 同時多発的に世界で誕生したあらゆる文明と呼ばれるものが別の世界線で存在していました。
中南米のマヤ・インカ・シカン・オルメカ、北米のネイティブアメリカン各族、オーストラリアのアボリジニー、 南洋諸国のハワイやアフリカ大陸、北ではシベリアなど想像している以上に世界の様々な地域で、 独自の体系を持つ神話や民間伝承(民話)、 星座に代わる様々な方言が、農耕暦や狩猟牧畜暦の代わりとして用いられてきたというのは想像に難くありません。
(これらを現在の標準星座と大雑把に区別して「アステリズム」と呼ぶ事もあります)
それらを横断的に解説しようと試みたのが、
2020年5月のInstagramLIVEから数回の題材となった【星座の世界史】です。
プラネタリウムソフト(オープンソースソフトウェア)【Stellarium】、地図ソフト【GoogleEarth】にて星座の誕生から1922年のIAU採択、そして2019年のガンマ線星座までを駆け足で辿りました。そこで感じたのは「1,2時間で解説するには情報量が多すぎるよね」という事でした。 更にその後改めて各国の神話を読み直した結果、解説内に不正確な情報がかなり含まれていた事にも気付いてしまいました。 LIVEを視て下さった方々には申し訳ございません、一旦はその内容を忘れていただけると助かります。<m(__)m>
また日を改めて、動画を撮影したりLIVE公開なり出来たらと考えております。
(ですが内容が無いようなので予定は未定です)
元ネタは最近発売された下記の書籍「世界の神話大図鑑」です。
各言語特有の名前が登場するので、一気に読むと頭の中が混乱します(笑)