大人の図鑑カフェ

4月1日:御推薦本コーナーNo.17「ドードーをめぐる堂々めぐり」推薦人:tomoru_灯_さん

4月1日:御推薦本コーナーNo.17「ドードーをめぐる堂々めぐり」推薦人:tomoru_灯_さん

その道のプロの方にお願いして、その方が参考にされている本を願い倒して紹介して頂くこのコーナー。「店長の眼」だけでは偏りが出るため、毎度毎度、「その道のプロ」を口説き落とすわけですが。皆様遠慮なさる方が多いため、いつも難儀する問題のコーナーでもあります(笑) 
今回はfumikuraロゴ入り「灯台マグカップ・ゴブレット」を製作して頂いている、練馬区在住の【tomoru_灯_】さんにご紹介を頂きました。
※2023年7月末までの4ヶ月展示販売予定です※

《紹介文》
・タイトル「ドードーをめぐる堂々めぐり」/川端裕人/岩波書店(2021)
店長(以下「店」):tomoruさん、今回は “作陶について影響を受けた本” とのご依頼を受けて下さりありがとうございます。
tomoruさん(以下「灯」):ふだん本を読み付けないので、図鑑か挿絵の多い本と聞いて、どのような本を紹介したら良いのだろうかと正直に言えばちょっと迷いました(笑)
店:ご無理を通してしまい、本当に申し訳ありません。でも確かに、心の一冊を紹介するのってなかなかにハードルが高いですよね。みなさんそう仰います(笑)
灯:そこでゆっくり考えて。そういえば友人から『現時点でキャリアハイになりそうな本だから』と言って貰った本を思い出したんです。まだ読んでいなかったんですけれど(笑)
店:あ。これまでは読んでいらっしゃらなかったんですね(笑)
灯:難しそうでなかなか、、、(苦笑)
  とは言っても、その友人に影響されていたのは事実です。
  テレビマン時代から、
  そのノンフィクションというジャンルに向き合う姿勢とか、
  取材力とか、論文を読んだり現地に行くだけではなく、
  そこから掘り起こした事実の補強に世界各地を飛び回ったり。
  そんな姿勢は見ていていつも漠然と「凄いな」と感じていました。
店:確かに、今回ご縁があり拝読して一番に感じたのは、
  その徹底した取材力と、
  物事を自分の目で最後まで確かめたいという、
  好奇心を突き詰める強いこだわりでした。
灯:そうなんです。
  この機会に改めて開いてみて、
  改めてその「こだわり抜く姿勢」に強く背中を押された気がしました。
店:ご自身の作陶に対する姿勢に変化があったと?
灯:そうですね……。
  
作陶を初めてまだ経験が浅いためか、
  自分が「試したい」「やってみたい」という事にたいして、
  踏み出すことを躊躇っていたところがありました。

  例えば新しい釉薬ですとか、土、モチーフ、
  販売方法など、数え上げればキリが無いのですが……。
店:そう言えば、tomoruさんを紹介する時【陶芸家】との肩書きに、
  「私まだまだそんな名乗れるほどじゃなくて、、、」
  ってご謙遜されていましたよね。
  ご自身の作家名もそのときはまだ付けて居ない状態で。
  でも、私としては十分、
  少なくとも“fumikuraにいらっしゃるお客様には広く愛される”
  と思ったからこそオリジナルマグを依頼したわけですし。
  実際に様々な媒体(町喫茶さんぽ海と灯台ニュース)など、
  一気に紹介・拡散されましたよね。
灯:それはたまたま……。
  陶芸って、楽をしようとすれば幾らでも出来てしまうんです。
  でも、クラフトワーカーとしての自分を振り返って、
  やっぱり“自分がやりたい、こだわりたい”と思う部分には
  妥協しないでやってみようと思うようになりました。
店:灯台のマグカップも、
  納品の度に細かくバージョンアップされていますよね。
  より深く、fumikuraの為にと考えて頂いているようで頭が下がります。
  そのような変化があったというのであれば、 
  ご友人に私からも大きな感謝を伝えたいです。
灯:そこは、この紹介からたくさんの方に読んで頂くことで喜ぶかなぁと(笑)
店:はい。微力を尽くして魅力をお伝えできるよう努めて参ります。
  この度はご友人(著者様)からのメッセージも頂戴しているとの事、
  難しいご依頼にお応え頂きましてありがとうございました。

<オールドスタイル/すこし太っちょを踏襲したフィギュア>

《著者:川端裕人さまからのコメント》
ドードーをご存知ですか?
『不思議の国のアリス』『ドラえもん』に登場する、でっぷりとした飛べない鳥といえば、思い出す人も多いはず。
物語の中に登場する架空の鳥だと思っている人もいると思うのですが、実は、17世紀までインド洋のモーリシャス島に生きていた実在の絶滅鳥です。
そのドードーが、絶滅直前の1647年、徳川家光が将軍だった時代に、はるばる日本に連れてこられていたという記録が見つかったのが2014年のことでした。
ドードーファンのぼくは、いてもたってもいられず、日本に来ていたドードーがその後でどこに消えたのか探しはじめました。
すると、それだけではすまず、オランダへ、イギリスへ、チェコへ、ついには、生息地だったモーリシャス島にでかけて、化石の発掘調査にまで参加することになってしまいました。
ドードーをめぐる大冒険。
ぜひご一緒にお楽しみ下さい!

《著者プロフィール(Wikipediaより引用)》
名前 川端裕人(かわばた ひろと)

日本小説家ノンフィクション作家

1964年兵庫県明石市に生まれる。千葉県千葉市で育つ。千葉市立千葉高等学校東京大学教養学部卒業。日本テレビに入社し、記者として科学技術庁気象庁を担当。1988年、「八月の最後の風」で第12回コバルト・ノベル大賞最終候補。1992年 – 1993年、日本テレビの記者として南極海調査捕鯨船に同乗取材。1995年、上記乗船体験をもとに『クジラを捕って、考えた』を執筆し、ノンフィクション作家としてデビュー[

1997年、日本テレビを退社してフリーランスとなる。コロンビア大学ジャーナリズム大学院にモービル・コロンビア・フェローとして在籍した。1998年に帰国し、『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞し、小説家デビュー[

2000年、『動物園にできること』で第31回大宅壮一ノンフィクション賞候補。2004年、『せちやん 星を聴く人』で第25回吉川英治文学新人賞候補。2007年、『てのひらの中の宇宙』が第53回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書に選出される[

2009年2010年、ニュージーランド・クライストチャーチ市に居住[

2018年、『我々はなぜ我々だけなのか』で科学ジャーナリスト賞2018、第34回講談社科学出版賞受賞。2021年、『理論疫学者・西浦博の挑戦-新型コロナからいのちを守れ! 』で科学ジャーナリスト賞2021受賞。

《蛇足:店長の感想》
まず、帯のキャッチコピーにある「ドードーが江戸時代に日本に来ていた!?」という部分から「本当だったらすごい」となり、序章と1章の日本編で出てくる豪華な顔ぶれ(将軍や幕府要人、更には天皇家まで)に驚き、そこから本文では文献・資料を読むに飽き足らず、標本や第一次資料を足で訪ねる世界を股に掛けた壮大な旅が始まります。最終的には生息地であったモーリシャス(アフリカ大陸横、マダガスカル島から少し東)での発掘調査にまで同行という、とんでもない行動力と取材力を発揮されています。いや、ジャーナリストとはいえ外国にある博物館の資料庫に“ふつうなら”簡単には入れません。
同じく帯にある「ようこそ、生命と歴史の交差点へ」ですが、内容としては「生物学」「歴史学」だけではなくその枝葉として「博物学」「標本学」「地理学(生物境界線)」「宗教学(進化論論争)」「文学(不思議の国のアリス)」「絵画」など広い分野を縦横無尽に走り回っています。それが単なる博覧強記の人で終わらず、散漫にもならずしっかり編み込まれています。結構なボリュームがある本書を、最終的な目的である『ドードーの魅力を伝える』『ドードロジスト/ドードー愛好家 を増やす』ところまで浪漫と説得力を持った熱量で読み切らせる良書だと感じました。図版もふんだんに盛り込まれています。

個人的な事を付け加えるのが赦されるのであれば「学芸員課程中退(博物館実習だけやっていません)」の私としては、博物学の萌芽とも言える大航海時代以降の“驚異の部屋(ヴンダーカンマー)”と欧米列強の収奪や家畜の移植よる意図しない絶滅から始まって、「珍奇新コレクター」からの脱皮、標本類の「記録保存」だけだった学問が、「種の保存」、「共生学」、そして「固有種生物世界の再構築」へと発展していく過程にふれられていること。そしてその一歩にも日本人が関わっていたことに大きな驚きと喜びを感じました。
また【図鑑】とは、こうした博物館キュレーター(時に蒐集家やコレクター)が「整理・分類・体系化」をした結果にできる成果物なので、【大人の図鑑カフェ】という店のコンセプト根幹に関わる意義づけという意味でも、非常に共感の多い本となりました。
そして、未だに謎の残る出島ドードーの行方が判明した時、それはやはり「世紀の発見」に繋がるのではないかという壮大な浪漫を胸に抱かせてくれたことに感謝をして、感想の結びとさせて頂きたいと思います。

《関連書籍:fumikura蔵》2023.4.1.