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南沢湧水群とコカコーラ多摩工場

南沢湧水群とコカコーラ多摩工場

img_1094兵庫は明石の瓶三ツ矢サイダー工場の話を掲載したので、夏の終わりに出かけたコカコーラ多摩工場(東京)と、その付近にある湧水群の関係を追っていきます。

食料品、とりわけお酒やドリンクの製造に欠かせないのが「水」です。昔から湧水(自噴水、伏流水)や深井戸などで良水を確保することから、製品作りが始まることも多かったのです。それは前記事の平野水(三ツ矢サイダー)、仁王水(ウィルキンソン炭酸)しかり、灘や伏見の酒造りしかり、当店で取り扱っている日本酒「澤乃井」も同じです。また、ウヰスキーでは「山﨑」「白州」なども、工場内の取水井戸があります。味噌や醤油、豆腐なども、自然水と関わりの深い調味料や食品ですね。和菓子ですと「水まんじゅう」や、近年の話題では「水信玄餅」など、枚挙にいとまがありません。

コカコーラ多摩工場の極近い場所に、南沢という湧水群があります。東京都心にもそれほど遠くない場所(東久留米市)こんなに?と言うほど水量も豊富で、しかも直飲できて市の水道水に使われるほど水質も抜群という奇跡の泉。観光地化する気が全く感じられない、武蔵野の原風景が残る景観は、ぜひ、このままひっそりと保存されて欲しいなあと思うほどです。大量の観光客に名泉が荒らされる様をあちこちで見てきているので、敢えてここでも場所は伏せることにします(笑)

img_1096さて、まずはコカコーラの多摩工場です。「自分の店で取り扱う食品は、出来ることなら自分の目で見てくる」を信条としているので、こちらも瓶詰めラインのある多摩工場をセレクト。外観からしてアメリカのポップで可愛らしいファサード。内部の見学スペースも同じように1950年代のアメリカを見ているようで懐かしくも愛らしい。

img_1097今回は訳50人の地元の幼稚園生と一緒の見学でしたので、内容はかなり優しくかみ砕かれていました。それでも、製造工程の映像解説やPETボトルの原型や金型、リサイクルの取り組みなど、通常の飲料会社で教えて貰える事は一通り網羅。実際にラインが動いている様は圧巻の一言です。(三ツ矢のページでも書きましたが、瓶製品の製造ラインは見学通路からは見にくい場所にあるため映像解説が主です)

img_1098しかし、、、なのです。最近はどのドリンク工場(ボトリングウォーター工場は別ですが)の工程の中でも見かける「水を磨く」もしくは「純水をつくる」という部分に違和感を覚えます。なんとなく「天然の美味しい水」を連想するような、安心安全と言うよりは「美味しい」に力点が置かれていそうな素敵な単語。その実は、徹底的な高精度ろ過を行うことで、微生物や土砂などはもちろんのこと、ミネラルウォーターとしての条件であるミネラル分などさまざまな不純物を取り除いたお水(ここでは敢えてH2Oと書いてしまいましょうか)を作る事です。限りなくH2Oのみの状態に近づけた、純度の高いものが「純水」なのです。ミネラル分は天然の物では無く、後から純水に「添加」されます(残念ながらこれは三ツ矢サイダーも同じでした、、、)。ここで始めて「えっ?」と思う方も多いかと思います。誤解の無いように、悪意を生まないように書きますと、まずこれは「安心安全のための処理」で、「大量生産で地域による水の水質差を極力無くし、均一な製品を作る上では絶対に必要なこと」なので、その工程自体を「悪い」と言いたい訳ではありません。むしろコカコーラのように世界規模で同一商品を販売するには、水事情が異なる国の差異を無くす、ごく当たり前の「処理」だと思います。問題なのは、、、その部分を微妙にミスリードする言葉の選び方、ですよね。水道水を直飲できる国は世界でも本当に少ない方です。その中でも日本の水に対する想いは信仰にも近い程。だからこそ、この言葉の選び方は「上手く丸め込みましたね」と皮肉ってしまうほどに心に引っ掛かるんですよ。「水にこだわってます」という余計な付加価値を付けようとしないで、そこは素直に、「安心安全にために高精度ろ過を行っています」で充分だと思うんですよね。ましてや、直線距離で2kmも離れていない場所に素晴らしい湧水群があるこの工場では特に強く感じてしまいました。工場自体は可愛らしくて本当に面白かったです。

fullsizerender5そして、美味しいですよねコカコーラ。試飲会では瓶入りも選べるのが嬉しいです。私はとにかく瓶飲料が好きで、コカコーラに関してもボトルコレクションの写真集を店のラインナップに加えるほど(写真右)、あの独特の瓶型が好きです。昨年(2015)は暗闇でもコカコーラと解るあのデザインの瓶になって100年の記念展示会(高島屋)があり、記念本も出ました(写真左)。そしてもちろん、通年召し上がれるように御用意しています。

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では、気を取り直して。工場からバス停を幾つか、そこからトテトテと歩いて数分。さっそく、水量の多い清流が現れます。魚が泳ぎ、野鳥や野鴨、あれっ?と思ったのは、、、「野良スッポン」(大丈夫なのか?)まで居ました。川沿いの遊歩道を歩き、水源への案内看板が無いので地元の方に話を伺いつつ南沢湧水池へ。スマホ地図を見ながらでも結構迷ったんですが、みなさん丁寧に道順を教えて下さいました。氷川さんが祀られているところなども、やはり水神信仰といくらかの関わりがあるのが解ります。本流の水源地は水道局の管理地になっていて立ち入りは出来ませんが、支流はちょっとした緑地帯になっていて、崖下泉でしょう、幾筋もの流れがわき出ているのが確認できます。それにしてもかなりの水量です。

img_1128img_1131img_1138更に同じ水系の別の水源を求めて竹林公園へ。こちらも崖下泉で、ちゃんと水神様も祀られています。地元の方に大事に愛されているんですね。駅に戻る道すがら遊歩道から河原を見ると、親水公園とまでは言わないまでもなるべく自然に手を入れない形で整備がされていました。子どもの嬌声が響き、僕らにとっては既に非日常となってしまった景色が、当たり前のようにのんびりとした日常になっていることを少々うらやましく思いました。練馬も区内最後の緑地とか、田舎などとも言われますが、石神井や大泉の湧水量が減少しているところを見ても、なんともうらやましい限りでした。そして、こんなに近いならまた来ようかなぁと思う、本当に良い景色でした。

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※湧水はやっぱり癒やされます。店内にも詳しい御案内本なども取り揃えていますので(1枚目の写真)、興味のある方はお声掛け下さい。店長は大学時代に湧水地形をちょっとばかり親しんでいたので、ある程度はお話しも出来るかと存じます。下二枚は水関係の自宅蔵書(大学時代の研究報告書も含む)です。

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