__灯台とfumikura。なんの繋がりがあってコラボをするの?__
最近、強烈にプッシュしている「海と灯台プロジェクト」さんや「燈の守り人」さんとのコラボレーションにつきまして、そのような疑問を素直に問われる方が多くいらっしゃいます。折角の機会ですのでこの場を借りまして、拙いながらfumikuraという場所に込めた想いをロゴを通して感じて頂ければとキーを叩きはじめました。※途中の写真は店長の旅の記録からです※
店の名前「fumikura」の由来につきましては、ごく初期の過去の記事「fumikura=文庫(こちら)」に譲りますが、今回は店舗ロゴにフォーカスしてお話を出来ればと、考えてみました。
様々な企業様や行政機関とのコラボレーションをする際に、必ずお渡しする添付資料としてfumikuraという店の理念をザックリ書いた「コンセプトシート」を用意しています。その中には社名「三方善(さんぽうよし)」に込められた想いと同様に、ロゴに込められた想いや願いも書いているのですが、開店9年目の今までそう言えば店舗ブログに載せていなかった事に今更ながら気付いた次第。もうね、阿呆か、今更か、という想いで小っ恥ずかしいのですが、一度口に出したことですので書き進めていこうと思います。※途中で迷子になるかも知れません……※
そんな前振りの冗談はさておき、割とすんなり決まった「fumikura」の名前と異なり、ロゴマークは難産でした。フリーランスのイラストレーターさん達が集うデザインコンペサイトを利用して広く募ることしたまでは良かったのですが、想いを図案化する際に必要なキーワードを簡潔明瞭な言葉で箇条書きにする必要性があり、更にイメージが湧きやすいようにfumikuraという「空間」や「居場所」をシンボライズする具体的な図形を引き合いに出す作業が始まります。そこでご登場願ったのが【灯台】と【北極星】だったのです。
フレネルレンズ
博物館明治村
当時のロゴ製作依頼文をそのまま引用しますと以下のようになります。
__昼間はBook cafe、夜はミニプラネタリウムを備えたbarになりますが、主体はあくまでもbook cafeです。本は図鑑や写真集などのビジュアル本が中心になります。コンセプトは「モヤモヤがアイデアにつながる店」。自分の頭に中で考えていた言葉を具体的な視覚イメージに、また、言葉にならなかった視覚イメージを言葉に、そのヒントを得られるお店作りを目指しています。そのための「灯台」のような、「北極星」のような、お客様のよきアドバイザーであり目印となるようなロゴを求めています。内装は全体的に木調で、ゆったりした座席を備えています、そこに天井高まである本棚とミニプラネタリウム。手元の読書灯を除けば、全体的に光量は抑えめです。「fumikura」はやや大きさが抑えめで、ピクチャーの方を大きくして頂きたいです。用途は外装の他、ホームページ、ショップカード、暗幕代わりのタペストリーにと、大小問わず結構な頻度で使われます。__
ここからフォントなどのイメージを整えて頂きました
デザイン by.玲音珈琲さん
ここから2週間の募集期間を設定したところ……、あっという間に10件を越えるデザインが集まってしまい、更には日を追う毎に加速度的に増えていき20,30,40件と……。どれもこれも魅力的に思えて迷っている間にもデザインの応募件数は増えていきます。“これではいけない” と、今度はそこから絞り込むために自分が目指す店のイメージを“より寄り掘り下げ”て、自分の大切にしたいことを抽象的ながら言葉にしてみることにしました。そこでようやく辿り着いた自分の願いの核が「荒海(社会)を征く人々への安心した道標と寄港地を提供したい」との想いでした。
禄剛埼灯台
扁額
__小熊のひたいのうへは
そらのめぐりのめあて__
宮澤賢治が作詞作曲して遺した「星めぐりの歌」に、北極星を歌ったそんな一説があります。北極星は船旅に目印として欠かせない不動の星。日本では別名「心星(シンボシ)」とも呼ばれる事もあると知りました(野尻抱影「日本の星~星の方言集~」中公文庫)。心に輝くメアテボシ、それは自分を含めて皆が秘めている人生の目標のように思えたのです。人生の航海は時に闇夜(DARK SEA)に迷う事もあるでしょう。そんなとき、心に輝くメアテボシを見失わぬよう、海を照らして安全を伝えるのが灯台の燈(あかり)だと考えました。そうなると、ロゴはすんなりと現在使用しているものに決まり、店の核となる“心星”が定まったように思います(その後も応募が増えすぎたため、期間を大幅に残して応募を停止させていただく事になりました)。マグカップと共にある本がブックカフェを、めくった本(図鑑)から飛び出した二つの星がワクワク感を、そして文字ロゴだけでも充分に伝わるようにfumikura の ” i “ が灯台と星になりました。(↓は加賀谷玲Ver.星めぐりの歌/加賀谷玲公式youtube Channel)
__” i ” の星(あいのほし)__
についてはこのブログで何度か取り上げていますが、ロゴ募集の時から思い描いていた事。棚に並ぶ本や店の空間が提供する大事な3つの ” i “(「情報_information_」「閃き_idea_」「想像_imagination_」) を含意しています。なので、灯台マグカップにも必ず、この「あいのほし」を入れて頂いています。
そんな想いで営業を続けて8年、「灯台マグカップ」と「灯台守のおやすみ珈琲(デカフェ)」を切っ掛けに、海と灯台プロジェクトさんとの出会いがありました。GPSやLED、ソナーの高性能化によって役割を追われつつある「灯台」の新たな価値を見いだし “物語化する” という取り組みは、fumikuraが発信し続けてきた “灯台がシンボライズする店作り” と親和性があるように(勝手に)思えてしまったんです。例えば店に置く小物類をはじめ、玄関のポーチライトをマリンライト風にしたり、“WELCOME!” の意味を込めて雨天時や夜間に点灯する船舶の「右舷灯(緑燈)」も、営業中を現示する目印として親しまれています。
今回のコラボレーションの中で「海と灯台サミット」への参加や、書籍『灯台を読む』『海と灯台学』を通読したことで、また新たな共通点を見つけました。
古代ローマの博物学者プリニウスが、世界の七不思議として有名なアレキサンドリアの大灯台(ファロス灯台)の灯(あかり)を見て
__(灯台の)その灯りは、星に似ている__
そう書き残したとのこと。これには「航海と星、灯台と星は切り離せない。古代の星の役割を近代の灯台が担ってきた。」そんな意を感じました。翻って日本を見たときに、海の難所の目印としてその役割は「狼煙(のろし)」にはじまり「灯明台(常夜灯)」から「西洋式灯台」へと移り変わってきたそうです。そう言えば石川県珠洲市の禄剛埼灯台を訪れた際に訪れた道の駅は狼煙町。その地名に歴史の名残が見て取れました。
図鑑カフェfumikuraは、海の無い練馬区という自治体にあります。それでも、人の世を海と捉え、航海の標となれればとの想いは同じです。心許ない小さな小さな店ではありますが、どなたかの安心や道行きの標となれましたら幸いです。
(明治4年)
(明治6年)
役割を果たしていたとのこと
博物館明治村に移築
この神社の石段を登り
遊歩道で島を半周する
※灯台マメ知識※(燈光会発行「のぼれる灯台16基」より引用)
・地図に使われる”崎” と 灯台の名前に使われる “埼” “碕” には区別が有り、土へんの「埼」は陸地(平地)が水部へ突出したところを表し、山へんの「崎」は水部や陸部を問わず山の出っ張った場所を示しています。海上保安庁海洋情報部では漢字の意味から地形が判る土へんの「埼」を採用し、海上保安庁が関わる灯台や海図の表記には「埼」の字を使用しています。一方、国土地理院では前身の陸軍陸地測量部が山へんの「崎」を使用していたため、引き続き「崎」の字を使用しています。
・また、「みさき」を表す名称には他にも「岬」、「碕」、「角」、「鼻」等があります。これらの文字が付いた地名を見つけたら、意識して周りの景色を見てみると発見があるかもしれません。
※店長は大学で地理学を専攻していたのですが、昨年こちらを読むまでは明確な違いを説明できませんでした。意識して見てみると、確かに御前崎(おまえざき)と読んでいた場所にある灯台は御前埼(おまえさき)灯台だったり、改めて地名や名称の妙を識って面白かったです。※