大人の図鑑カフェ

fumikuraと三方善(5周年謝辞)

fumikuraと三方善(5周年謝辞)

2021年1月7日、図鑑カフェfumikuraは無事に5周年を迎えることが出来ました。
喫茶店の継続年数はここ20年間厳しい状況に置かれ続けており、
政府統計資料でも1周年を迎えられるのが6割、3周年で3割、5周年は1割弱という状況です。
珈琲チェーン店も1st.waveからはじまり、現在の3rd.wave、
果ては新型コロナ禍では4th.wave業態の誕生がまことしやかに囁かれる中で、
fumikuraという【book cafe】という業態も大変革の真っ只中に居ることは確かだと実感しています。

5周年という記念日を”営業自粛”という状況で迎えざるを得なかった事は悔しさを禁じ得ませんが、
大丈夫、fumikuraは逆境に強く、しぶといのはご承知の通り。
今年も既に新たな試みを取り入れるべく、水面下で着々と準備を積み重ねています。

また、fumikuraというカフェとしての5周年イベントは逃がしましたが、
fumikuraには実に「3つの記念日」があるのです(^_^)
それは
1:創業記念日(6月1日)
2:会社設立記念日(12月1日)
3:fumikura開店記念日(1月7日) です。
fumikuraという言葉の由来は(こちら)※

開店5周年を迎えたからこそ、
店の歴史、会社で言うところの「沿革&企業理念」にあたるお話を、少し。

1998年06月01日:創業記念日(前身のチェーン系弁当屋を母が開業)
2011年12月01日:合同会社三方善(さんぽうよし)、設立記念日
2016年01月07日:図鑑カフェfumikura 開店記念日

2019年06月01日に、「この場所で20周年キャンペーン」という記事を掲載しましたが、
もともとこの地には、父母が開業したチェーン系弁当店(個人事業主)がありました。
開業当時は私も大学4年生で、父も広告代理店の勤め人でした。
定年後の生活のためにと、主に母が奔走して系列店のパートアルバイターで修行を積んだ後にオーナー店として開業したのがその弁当屋でした。
父は名目上のオーナーで、実際に切り盛りしていたのは母でした。
(詳しくは練馬区産業振興公社発行の冊子「neri・made」参照)
私と言えば、給与計算や人事労務経理の関係を手伝っていただけで、普通に総合書店に就職。その後に地域創育NPO法人や福祉系公益社団法人を経て弁当屋を継ぐことになります。
父の跡を継いでオーナーになったのは2010年春、まだ父母が健在な中でようやく一通りの業務の引き継ぎを終えた2011年初に父が突然の他界。
ここで、気を引き締め直す意味もあり、個人事業主から法人化を決意。
最初は
「弁当屋なんだから合同会社“特盛”でいいんじゃね?」
などとふざけていましたが、
悩んだ末に近江商人の商訓でもある「三方良し」から社是として名前をいただきました。
これでも一応、教員免許や社会教育主事といった教育系の資格を所持しているため、
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三方が良くなる商いを理想としました。
およそ弁当屋の社名としては異質と思われたのか、法務局で登記の際や、税理士事務所さんへの報告などで大層驚かれた記憶があります。
(由来となった言葉をご存じの方からは「良い社名だね」と言われる事が多くて面はゆい時もあります。)

一応は元書店員、日本経済新聞に掲載されていた「社会科学の本棚」(現在は「リーダーの本棚」)を担当していた時期があり、様々な経営者の本棚を元に店舗内に再現していました。その頃だと大前研一や渡部昇一、斉藤一人さんとか松下政経塾の面々の経営理念の本などをチラチラ見てました。
ほとんどの言葉は素通りして頭に残っていませんが、三方善だけはイザ社名を付けなければならないとなった時に思い出した数少ない言葉です。自分の名前を冠すると会社は代を重ねない(もしくは親族企業で終わる)、どちらかと言えば経営理念を端的に表した言葉が良いという話をチラホラ聞いていたので、この名前になりました。

そして2021年には、2011年に法人化して10年、fumikuraに変わって5年を迎える事になりました。起業時の理念通りの店作りを、業態は変われど、いや、変わったからこそお客さんや社会と共に歩んで来ることができました。
単なる小さな町の喫茶店が「どうしてそうなるの?」という「妙な企画(フェアやイベント)」をしている事を、お客様はきっとご存じだと思います。(それは商売として成り立っているんだろうか?という企画に、私は手を出したがる癖があります。)
それはもちろん、自分が好きだからという動機が原動力ですが、常にその先に、お客様を超えた先に社会を見据えているからです。(偉そうな書き方ですね(^^ゞ
産業振興公社さんの冊子に出たり、手紙寺さんのような社団法人とのコラボなどは、お客様の更に先にある社会へのアプローチです。また、鉄道会社や映画会社のプロモーションやチャリティーイベント、クリエイターさんと共に発表の出来る場所作りなども、店の特徴付け(ブランディング)という意識を超えたずっと先にあるものと繋がっています。

--ここからちょっと面倒な事を書きますがおつきあいください--
ぶっちゃけて言うと、自営業というのはある意味自慰行為なんです。(性行為じゃありません。性的意味の「自慰」という単語の成立は新しく、1922年にそれまで「手淫」や「自涜」と呼ばれていた悪名・汚名を晴らすため性科学者の小倉清三郎が名付けた言葉が一般化しただけ)。
本来「慰める」には2つの意味があって、
1)さびしさ・悲しみ・苦しみなどをまぎらわせて、心を和らげ楽しませる。&憂さを晴らす
2)なだめ、いわたる
と、なっております。そこで、自慰に対義語はありませんが、上の言葉を無理矢理に解釈して「他慰」とすることにします。1)の「心を和らげ楽しませる」ことで理解を得、お客さんに心地よく過ごしてもらう対価を頂く訳です。
なので、自慰:他慰が8:2だろうが9:1だろうが、自分の家族や従業員の生活が安定していればそれで良いのが会社です。(株式会社の場合は株主の動向もありますが)まぁ、普通は大手企業で8:2(自分の中には従業員が含まれるので)、個人事業主で7:3ぐらいでやっている様に感じます。
fumikuraは、、、普段は6:4、イベントは3:7という感じです。

言い方を変えてみましょう。
エゴ(自我)ってのはスーパーエゴ(家庭や集団として伝統的に身についた因習)とエス(無意識、欲:インナーチャイルドと呼ばれる場合も多い)という、自分の中にある二つの相反する自分(価値観)、「こうあらねば」という戒めの自分と「これやりたい、欲しい」という本能むき出しの自分を上手くコントロールしてこそのエゴ(自我)なわけです。
起業というのは多かれ少なかれ「自身の夢」を叶えるために会社を興すものです。上の例で言えばエスの部分が動機の8割と言ったところでしょうが、この中身の10割がエスでは会社はあっけなく潰れるでしょう(それでは単なる趣味です)。また、スーパーエゴが10割でもあっけなく潰れます(それは慈善事業です)。そうした視点で普段のfumikuraを視てみて下さい。
あれ? と思う場面がそこここに出てくると思います。fumikuraはトータルで視ると限りなく5:5に近いバランスでお店を運営しています。そりゃあ儲からないですよね(苦笑)

それでもfumikuraという場所が続いてこれたのは……実を言うと自分でも驚いていたりします。本当に良いお客様に恵まれたとしか言い様がありません。理想だけでは霞も食えないこんな世の中で、これだけ自由勝手に作った店を皆様が盛り立てて下さるとは思っても居ませんでした。
それは私本人だけで無く、家族や親族、そして、お客様でさえも「おいおいそんなんで大丈夫か?」と思っているであろう中で、”たった5年”、”されど5年”というほど、私にとっては長く有り難い歳月となりました。

社会的大変革の真っ只中にこれから先の5年,10年を見据える中で、ある程度の変化は必要だと思います。ここからどう変わり、どうブレずに芯を残すのか。難しい舵取りを迫られている中でも、当店のシンボルである“灯台”や“北極星”を道標に、たゆまなく進み、また皆様の安全な寄港地として穏やかで暖かくお迎えできるよう志を新たにして、この5周年を迎えられた謝辞とさせて頂きたいと思います。

令和3年1月7日

図鑑カフェfumikura
合同会社 三方善
代表社員 井守正暁