大人の図鑑カフェ

望月の欠けたるを

望月の欠けたるを

本日は皆既月食だそうですね。以下国立天文台の皆既月食観測ページから引用、本影と半影の違いも解説されていて流石ですね、親切です。

__月は20時48分に欠け始め、21時51分には完全に欠けて皆既食となります。皆既食が1時間17分続いた後、23時8分には輝きが戻り始め、真夜中を過ぎた0時12分に元の丸い形となります。多くの方にとって比較的観察しやすい時刻に起こる月食です。__

今回は皆既の時間を含めて、比較的長い時間観測出来る月食で、しかもfumikuraの花見席からも上手くすれば見える、、、かも(笑)ということで、本日もフレーバー発泡酒「blue moon」をご用意してお待ちしております。滅多に無い事を「吉兆」ととるなら、色は真逆ながら今宵も「吉兆」を楽しみましょう(^_^)

以下、古い文章ですが皆既月食にまつわる店長の駄文。お付き合い頂ければ幸いです。

 

__望月の欠けたるを__

皆既月食は、
欠けていくさま、満ちてゆくさまを 
のんびりと眺めるのが好きです。

2000年の7月、 
奥多摩の山中にある、鉱山集落の廃村跡に宿り、 
朽ちる民家の軒先で、一晩の怪奇を楽しむことにしました。 
「繁栄の潰えた廃村にて、望月の欠けたるを。」 
との、いささか厭世な趣向ではありますが。

物好きな友人を2人捕まえて、いざ廃村へ。

山腹に隠れるように造成された、50世帯もの手積みの石垣。 
阿弥陀籤のように巡らされた石段を登り、 
最上段にある民家から振り返れば、 
山々を従えた絶景が手に入りました。

庭木の枝に瓦斯灯(ランタン)をつるし、夜を待つ。

インディゴに染まりゆく空に真白の月が昇ると、 
月明かりに照らされる山々の稜線は、とても静かで、美しい。 
瓦斯灯を消し、 
いつのまにか音もなく始まる満ち欠けの不思議を、見る。 
互いの手には、沢の水で割った、酒。

一夜の月の蝕みに、 
村の栄亡を含んだ怪奇談を、紡ぐ。 
恨めしそうなオレンジ色に輝きを失う皆既の月は、 
廃村の宿りにとても印象的でした。

フィナーレまでの数時間、 
酒を飲んでは月を見る、を繰り返し、 
無事に光を取り戻した望月を拝んだあと、 
寝袋にくるまって朝を迎えました。

じっくりと月を見る機会もそうそう無くなってしまいました。 
たまには月にあわせて一杯、とも思うのですが、ね。 
なかなか。

こういう風情や趣向が解ってくれる人も減りましたねぇ、、、

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「廃村跡」とは言っても、
2006年までは地元の古老が一人、住んでいらっしゃいました。
もともと一帯は古老の土地だったのですが、
鉱山開発の折に坑夫集落が開かれ、閉山と共に氏を残して棄村。

何度か許可を得てお訪ねして、
坑夫集落の方で皆既月食を観たりもしました。

氏が下山した後のことは、洞窟関係者の話でしか流れてきていないのですが、
サバイバルゲームで土地が荒らされるので、
坑夫集落の上屋は、すべて撤去されている模様。
だとしたら眺望は少し良くなっている、、、と、考えるのは早計。

下草狩りなどをしていた古老が下山して12年、
山にかえっていてもおかしくないですね。また訪れたい場所です。

写真1~3枚目は坑夫集落跡(2000年7月撮影)。
昭和50年代で時が止まっている。
4枚目は集落最上段からの眺望。南側に開けているので月見をするには最適です。
5枚目は、古老の畑。石積みがとても綺麗です。

※今日の題名は言わずもがなですが藤原道長「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる事も 無しと思へば」から※