大人の図鑑カフェ

ご推薦本コーナーno.7「明治の万国博覧会の再現美術展」

ご推薦本コーナーno.7「明治の万国博覧会の再現美術展」

その道のプロの方にお願いして、その方が参考にされている本を願い倒して紹介して頂くこのコーナー。「店長の眼」だけでは偏りが出るため、毎度毎度、「その道のプロ」を口説き落とすわけですが。皆様遠慮なさる方が多いため、いつも難儀する問題のコーナーでもあります(笑)(※金魚の壽ちゃんはお客様のご要望により引き続き店内飼育となりました。かわいがって下さい(^_^)※)

今回は、、、他の追随を許さないほどの装飾と実用性を兼ね備えたガラスペン作家【哲磋工房(テッサーコウボウ)】様からの御推薦本「明治の万国博覧会の再現美術展」(京都清水三年坂美術館)のご紹介です。

<御推薦文>
 私のお薦め本は、「明治の万国博覧会の再現美術展」という本です。
「再現美術展」というとレプリカかな?と思われるかもですが、明治時代に開催された万国博覧会に出品された本物を、京都の清水三年坂美術館で展示した際の図録です。
上記の美術館に行った際に購入しました。

まだ日本が開国したばかりで海外へのまともな輸出品の無い時代。
漆器、陶芸、彫金、七宝、織物などの職人達が生き残りをかけて作品クオリティを上げ、海外の人たちをビビらせたという作品達は、どれもこれも恐ろしいほどの超絶技巧を駆使し感性豊かに仕上げられています。現代ではまず再現不可能なモノばかり。
この本ではそれらの作品の作り方や歴史などの解説文はありませんが、その代わり大きな写真で載っているので見やすく、工芸にあまり詳しくない方が見ても作品の凄さが伝わると思います。

現在私が扱っているガラスとは分野が違いますが、私が追い求める作品クオリティの到達領域です。実物を清水三年坂美術館で見てきましたが、圧巻でした。もし自分が作る立場だったら「すみません勘弁してください」と言いたくなると思います。(この本を眺めるたびにそう思います…。)
私はこの本にあげられている作家達に比べて技巧的にも発想の柔軟さも足りていないので、まだまだこの領域にはたどり着けていません。しかし彼らと肩を並べられるよう今後も研究開発を進めて行こうと思っています。

手作業でなにかを作る人なら一回は見て全く損は無いと思います。

拙い文章ですみません。読んでくださってありがとうございました。

<店長からの返信>
 哲磋工房さま、お忙しい中、素敵な本をご紹介頂きましてありがとうございます。展覧会図録も数多く見てきましたが、日本の精密工芸の粋を集めたとも言えるこの図録には江戸から脈々と受け継がれてきた技術が息を呑むほどに見事に詰まっていて驚きました。
 今は手元にありませんが「美術手帖」や「別冊太陽」の特集で同じような日本の工芸技術を紹介する「超絶技巧」という特集が組まれていましたが、万博への参加という「日本の威信をかけた作品」の結集は他に類を見ない規模のものです。
 万国博覧会の歴史は江戸期(1867:慶応3年)のパリ万博への参加に始まります。明治期では日本の急速な欧米化ばかりが話題となりますが、その真裏で世界が日本美術を見つめる眼差しが憧れに変わって大きな影響を与えていった(ジャポニズム)ことは、日本人にはあまり知られていないかもしれません。その影響の結果がアールヌーヴォーの潮流へと大きなうねりとなり、『ヌーヴォー博』とまで言われる1900年のパリ万博(第5回)へと結実します。
 この展覧会は、日本の工芸美術が欧米化を受けて進化し、また世界が日本の作品群に魅了されたまさにその当夜を蘇らせる試みです。七宝や刺繍、彫金に蒔絵、その精緻さと着想、感性の豊かさ。急速な工業化により失われてしまった技術群【超絶技巧】を、まず能書き抜きで目でじっくり味わって頂ければ幸いです。

【哲磋工房(テッサーコウボウ)】様
ボロシリケイトガラスを使ってガラスペンの制作•販売をされています。
毎月25日〜27日22:00からminne ( http://minne.com/tessaritoshi ) にて販売。
また、他にも
神保町いちのいちグランスタ丸の内店にて毎月15日販売
PEN’S ALLEY Takeuchiでは​不定期で販売されており、
どこも即日完売になるほど(たまに秒殺の事も、、、)今では国内外を含めて入手が最も困難と思われるガラスペン作家さんです。↓minneさんでは2018年05月期(6月発表ホヤホヤ)の人気急上昇作家さんにも選ばれています!

私もガラスペン好きで銀座伊東屋に通ったものですが、昨年の神保町いちのいち本店の抽選会で書き味を試した際に大変驚きました。
魔法使いが今にも各種の魔法を放つような装飾性に富んだデザイン(写真は昨年末の三省堂本店のいちのいちにて、ブラックライトで蛍光させたWIZARD。惜しくも抽選には外れました、、、orz)。インク溝の彫りが深く緻密なため、インクの保用量が多く液垂れも起こさない。かつ筆滑りが良く、太線細線も自分の思う角度が解ればバッチリ思ったように決まってくれます。これは御婚礼や贈答品ほか引っ張りだこな理由が解ります。私も必ず自力で手に入れるぞー!との思いで日々、お店を頑張っています(^_^)

ご縁があって(他店からのご紹介だったとか)何度かご来店頂き、美術における思想的なバックグラウンド(※「中●病」とも呼ばれる部分も含まれますが※)などで話が弾みまして、本年2月某日には工房見学もさせて頂きました。(↓末尾記事)※今回展示させて頂いている『魔法の鍵』は見学の際に頂戴した物です。宝物なので宝箱での展示になりました(^_^)現段階では試作品ということで、販売のご予定は無いそうです。また、現在は上記店舗の注文に専念されており、オーダーメイド・リクエスト等は承れないとのことですので、ご了承下さいませ※なお、LEDライトは白色光・ブラックライトの2色用意させて頂きました。魔法の鍵は白色光で細部までご覧頂けます。ブラックライトは宝箱の蓋部分にございますガラスペンの栞に当てますと蛍光します。

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<Profile>

​中根 卓治
Takuji Nakane

<工房見学記>
 2月某日、愛知県某所の哲磋工房さんにお邪魔して参りました。完全に押しかけ取材だったのですが、御快諾下さいまして本当にありがとうございます。ご家族の皆様にも心のこもったおもてなし頂きまして、取材でお邪魔したはずだったのですが、完全に趣味のお話しで盛り上がってしまいまして、、、申し訳ございませんでした<m(_ _)m>
 

 中根さんは趣味の感性が似ているようで、中根さんの私室にてお話ししているとその興味の幅広さと奥深さに驚きます。書物もその他の資料も見事なものばかり、、、
 物作りへの感性は高校時代から既に高い領域にあったと驚嘆する他分野の足跡も数多お見せ頂けたのですが、そちらは現在の分野で無い事もあり残念ながら公開はNG。

 また、新技術の習得にも貪欲で、チラリチラリと(笑)、これからどんどん進化していくであろうその次の次の極秘ステップまで惜しげも無く見せつけて頂きました。(新技法については企業秘密のため写真をお見せ出来ないのが残念です)いや、それが完成したら世の中ひっくり返っちゃうんじゃないんですか?というレベルで他分野との面白い融合を模索していらっしゃいます。まだまだ何段階か変身の余地を残した漫画の熱いヒーローのような方、というのが、私の勝手な印象です(笑)

 その「面白い事をやってやろう」との気概が心地よく、私も微力ではありますが書物や古物などを通して着想のお手伝いが出来たらと考えております。全てのお客様にも言える事ですが、皆様ひとりひとりの好みを把握して本を仕入れるのは古書肆としての私の仕事であり、また喜びでもあります。手に取って頂いた時に無邪気に喜んで頂けるよう、同じく全力投球していく所存です。
 拙い見学記となりましたが、奥様、御母堂様をはじめ、元気なお子さん達に囲まれ、暖かく迎えて下さったことに篤く御礼申し上げまして、結びとさせて頂きます。